痔ろう(あな痔)と、肛門周囲膿瘍について
痔ろうは手術でしか治すことができませんが、ろう管が複雑になってしまうと困難な手術が必要になりますし、肛門機能を保てなくなる可能性もあります。 痔ろうは難病指定されたクローン病の合併症として生じていることもありますので、適切な治療を受けるためにも早めの受診をおすすめします。
肛門周囲膿瘍と痔ろうの主な症状
肛門周囲膿瘍では化膿を起こしているため、腫れや痛み、熱感、発熱などの症状を起こします。座れないほどの痛みや脈打つような痛み、38℃以上の高熱を生じることもあります。この段階で治療を受け、切開によって膿を排出させて抗生剤などによる治療を受ければ、症状はなくなります。
痔ろうになると排膿されるため痛みなどの症状がなくなり、下着の汚れや肛門周囲のかぶれなどを起こすことがあります。また、痔ろうを発症してからも繰り返し肛門周囲膿瘍を起こすことがあり、その際には痛みや熱感、腫れなどの症状を起こし、ろう管が複雑に広がってしまいます。悪化すると肛門機能に悪影響を及ぼし、便が漏れるなどを起こすこともあります。また、まれですか、痔ろうからがんが発生することもあります。
痔ろうの手術
痔ろうは手術でしか治すことができません。トンネル状のろう管が肛門周囲の組織にでき、複雑に枝分かれしてしまうと肛門括約筋が損なわれることがあります。肛門括約筋のしっかり締め付ける機能が障害される前の治療が重要です。
手術では、ろう管の広がりをしっかり把握して、肛門括約筋にできるだけダメージを与えないように配慮します。再発させないためには、ろう管をきれいに取り除く必要がありますので、位置や広がりを慎重に見極めて適切な治療法を選択します。当院では単純痔ろうの日帰り手術を行っており、複雑痔ろうの場合には連携している高度医療機関をご紹介してスムーズな治療を受けていただけるようにしています。
瘻管切開開放術(lay open法)
括約筋温存術(くり抜き法)
括約筋を温存するため、できるだけ切断せずにろう管をくり抜く手法で行う日帰り手術です。
瘻管切開開放術+括約筋温存術(くり抜き法)
括約筋部分は瘻管切開開放術でろう管を開き、括約筋を寄せるようにして縫合し、外側はくり抜き法を行うというハイブリッド手術です。日帰りで行うことができ、可能な症例が多いことが特徴になっています。