いぼ痔(痔核)について
肛門周辺の構造
肛門は、表に出ている皮膚部分と、内側の直腸粘膜の部分に分けられ、その境目には歯状線があります。
静脈叢
肛門周辺には網目状に毛細血管が豊富に走っています。肛門をしっかり締め付けて閉じるのは括約筋ですが、静脈叢がクッションにように働いて、匂いや液体を漏らさない高度な密閉度を実現しています。
歯状線
肛門と直腸の境目部分です。いぼ痔は歯状線の外側にできたものが外痔核、内側にできたものが内痔核と呼ばれます。外痔核は皮膚部分にできるため知覚神経があり、痛みを感じやすくなっています。内痔核は粘膜にできるため、炎症や嵌頓などを起こさない限り痛みを起こすことはほとんどありません。
内痔核
Goligher分類
内痔核は、進行状況によって4段階に分けられます。
1度
痔核のふくらみが肛門内にあって、排便時などに脱出することができない状態です。
痛みはありませんが、排便時に出血を起こすことがあります。
2度
排便時に痔核のふくらみが脱出しますが、自然に肛門内へ戻る状態です。
排便時に出血を起こすことがあり、炎症によって痛みを生じることがあります。
3度
排便時に脱出した痔核のふくらみが脱出し、指などで押さないと戻らない状態です。
排便時に出血を起こすことがあり、炎症によって痛みを生じることがあります。
4度
痔核のふくらみが常に肛門外に出ていて、押しても戻らない状態です。
嵌頓痔核
4度の状態で、痔核が括約筋によって強く締め付けられている状態です。
激痛があり、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
血栓性外痔核
痛みが強い場合には軟膏などを処方することがあります。またサイズが大きい場合には、摘出手術を検討することもあります。局所麻酔による10分程度の日帰り手術です。なお、術後、しばらくは個室のリカバリールームでお休みいただいてからご帰宅となります。
発症・悪化の原因
過度の飲酒、排便時の習慣的な強いいきみ、重いものを持ち上げる、デスクワークや立ち仕事など同じ姿勢を長時間続ける、妊娠・出産、冷えなどによって肛門への負担が増えて血栓性外痔核の発症や悪化につながります。血栓性外痔核がある場合は、あまり同じ姿勢を続けないよう心がけ、横になれる環境であればできるだけ横になるようにしてください。また、悪化を避けるためには、長時間移動もできるだけ控えましょう。
また、再発しやすい傾向がありますので、生活習慣を見直して肛門に負担をかけないよう心がけましょう。特に冷えは血流を大きく悪化させますので、夏も足腰を冷やさないようにしてください。
外痔核
いぼ痔の治療法
ジオン注射(ALTA療法)
再発率が10%程度あるとされていて、やや高めですが、再発した場合の再治療も可能です。
結紮切除術
ジオン注射+結紮切除術(E on ALTA)
内痔核と外痔核の両方がある場合に、内痔核にはジオン注射を行い、外痔核を結紮切除術で治療するというハイブリッド手術です。この手術も日帰りで受けられます。切除範囲を最小限にできますので、リスクが低減できますし、再発率も抑えられます。
輪ゴム結紮術
内痔核の治療に用いられます。内痔核の根元を輪ゴムで縛り、血流を遮断します。数日後に痔核が脱落します。再発しやすく、術後は脱落を確認するまで便通の厳格なコントロールが必要ですから、適応する症例は限られています。